現引きとは
信用取引は、証券会社に担保として現金または有価証券を差し入れ、自己資金の約3.3倍まで取引ができる。信用取引における信用買いとは、証券会社から現金を借りて株式を購入する。通常は株式を売却して借りていた現金を返済するのだが、「株式の購入代金+これまでにかかった諸経費」を証券会社に返済することで、株式を現物株として受け取ることができる。これを現引という。
概要
まず、押さえておきたいのは信用取引には手数料以外の費用がかかることである。証券会社から金を借りることになるため所定の金利がかかる。また、管理費や権利処理等手数料がかかるのは現物取引しかやっていない人には馴染みがないだろう。下表にSBI証券と野村證券(オンライン専用支店)の費用を示した。
(2025/09/21時点) | SBI証券 | 野村證券 (オンライン専用支店) |
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手数料 | 0円(ゼロ革命) | 1注文あたり524円 |
制度信用 買方金利(年率) | 優遇2.28% / 通常2.80% | 1.20% |
一般信用 買方金利(年率) | 優遇2.10% / 通常2.80% | 1.20% |
管理費 | 新規約定日より1ヵ月目ごとの応当日を経過する都度、1株につき10銭(税込11銭)の割合で発生いたします。 管理費は最低100円(税込110円)、最高1,000円(税込1,100円)となります。また、取引所等が定める売買単位が1株である銘柄については1株につき100円(税込110円)になります。 | 新規建て約定日より1か月を超えるごとに1株(投資信託等の場合は1口。以下、同じ)につき11銭(売買単位が1株である銘柄の場合は110円)を乗じた額をいただきます。ただし、その乗じた額が110円に満たないときは110円、1,100円を超えるときは1,100円となります。 |
権利処理等手数料(名義書換料) | 売買単位あたり50円(税込55円)が必要となります。 ETF/ETNについては、売買単位あたり5円(税込5.5円)となります。 | 買建玉について、総株主通知に係る株主等を確定する権利付最終日を越えた場合、1売買単位につき最大55円を乗じた額をいただきます(ただし、大幅な株式分割・株式併合等が行われた場合、割引くことがあります) |
※手数料・費用は変更になることがあるため最新情報を確認されたい。

これらの費用がかかることを踏まえ、自己資金よりも多くの株式を信用買いし、給料や配当金が入ったらコツコツ現引して株を自分のものにしていくのである。但し、制度信用は6か月で返済期限となってしまうことから、一般信用の無期限で信用買いすること。
この手法は特に高配当株に対して有効である。例えば、配当利回り5%の株を信用買いすると税引き後でも3.98%の配当収入を得られるため、信用買いにかかる金利+諸経費を上回ることが可能となる。
100万円の投資資金があると仮定して例を示そう。なお、わかりやすくするために税金や諸経費は省いている。
配当利回り5%の株が1株1000円である。手持ち資金で1000株、100万円分現物株を購入した。その1000株を証券会社に担保として差し入れて、もう1000株100万円分信用買いした。
現物1000株と信用1000株を持っているので、毎年10万円の配当を得られる。配当金が入ったら信用買いした100株を現引する。これを10年繰り返すと信用買い1000株はすべて自分のものとなり、現物2000株を所持することになる。もちろん配当金だけでなく給料からも返済分を捻出すればより早く返済が完了する。
この方法は、手元に十分な資金がないときに非常に有用である。相場が大きく下がったときにタイミングを見計らってガツンと買えれば大きな資産となるし、資産形成後も欲しい株を見つけた場合にも使える。
注意事項
ここで気を付けたいのは買方金利が低い証券会社を使うことである。100万円の2.8%は28,000円、100万円の1.2%は12,000円で、その差は16,000円にも及ぶ。野村證券の手数料は約定代金にかかわらず1注文あたり524円だが、信用取引をする場合には手数料の数百円なんていうのは金利差の前では極めて小さい。利ざやで稼ぐ場合には是非金利が低い証券会社を利用しよう。
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